欧州におけるビットコイン財務戦略の先駆者であるCapital B(旧:The Blockchain Group)が、伝説的な暗号学者でありBlockstream社のCEOを務めるアダム・バック氏から追加の資金調達を実施したことが明らかになりました。
2026年5月4日に発表されたこのニュースは、暗号資産を企業のバランスシートに組み込む「ビットコイン・トレジャリー」戦略が、単なる一時的なトレンドではなく、企業の長期的な成長エンジンとして成熟期に入っていることを象徴しています。
アダム・バック氏というビットコインの歴史において最も重要な人物の一人が、特定の企業への支持を強めることは、市場全体に対しても強力なシグナルとなります。
アダム・バック氏による130万ドルの追加投資とその内訳
今回の資金調達は、新株予約権(ワラント)の発行を通じて行われました。
発表によると、Capital Bはアダム・バック氏に対して1,000万個のワラントを発行し、総額約110万ユーロ(約128万ドルから130万ドル相当)を調達しました。
ワラント1個あたりの発行価格は0.11ユーロ(約0.13ドル)に設定されています。
このワラントには、将来的にCapital Bの株式を1株あたり0.98ドル、あるいはそれ以上の価格で購入できる権利が付与されています。
特筆すべきは、その行使価格の決定基準です。
権利行使価格は、以下の2つのうち、より高い価格が適用される仕組みとなっています。
- 直近5日間の出来高加重平均価格(VWAP)の130%に相当する価格(約0.84ユーロ)。
- 同社の指標である「mNAV 1.1」のユーロ換算額。
ここで用いられている「mNAV 1.1」とは、Capital Bが保有するビットコイン(BTC)の価値に対して1.1倍のプレミアムを乗せた、1株あたりの純資産価値を指します。
つまり、株価が単にビットコイン価格と連動するだけでなく、企業の戦略的な運営によってビットコイン以上の価値を株主に提供することを目指していることを示しています。
アダム・バック氏の支配権と戦略的パートナーシップ
今回の追加投資により、アダム・バック氏はCapital Bにおいて最大の戦略的投資家の一人としての地位をさらに盤石なものにしました。
同氏はすでに多額の出資を行っていますが、今回のワラント分を合算すると、完全希薄化後ベースで約3,950万株、全体の発行済株式の約9.97%を保有する計算となります。
アダム・バック氏は、ビットコインのホワイトペーパーで引用されたプルーフ・オブ・ワーク(PoW)システム「Hashcash」の発明者として知られ、ビットコインのエコシステムにおいて絶対的な影響力を持っています。
そのような人物が、フランスに拠点を置くCapital Bを強力にバックアップしているという事実は、同社が提唱する「欧州初のビットコイン財務企業」というビジョンの信頼性を裏付けています。
欧州におけるビットコイン・トレジャリー戦略の現状
2026年現在、企業がビットコインを保有する戦略は、米国のマイクロストラテジー(MicroStrategy)社が切り開いた道を、欧州の企業も追随する形で拡大しています。
特に、Capital Bと並んで注目されているのが、英国を拠点とするConnecting Excellence Group(XCE)です。
驚くべきことに、XCEが2026年4月下旬に実施した約79万ドルの資金調達も、アダム・バック氏が支援しています。
このように、バック氏は欧州におけるビットコイン財務企業のインフラ構築に集中的に投資しており、地域全体でのビットコイン導入を加速させています。
以下の表は、直近の欧州におけるビットコイン財務企業の調達動向をまとめたものです。
| 企業名 | 拠点 | 調達額(概算) | 主な支援者 | 戦略の焦点 |
|---|---|---|---|---|
| Capital B | フランス | 130万ドル | アダム・バック | 蓄積・mNAVの拡大 |
| XCE (Connecting Excellence) | 英国 | 79万ドル | アダム・バック | トレジャリー構築 |
| Nakamoto | 米国(Nasdaq) | – | 機関投資家 | デリバティブ活用 |
二極化する企業のビットコイン戦略
市場全体を見渡すと、ビットコイン財務戦略は2つの方向に分かれつつあります。
一つは、Capital Bのように「ビットコインを積極的に蓄積(Accumulation)し、長期保有する」アプローチです。
もう一つは、ビットコインの価格変動リスクを抑えつつ収益化を目指す「リスク管理型」のアプローチです。
例えば、米国のNakamoto社は、保有するビットコインの価格下落リスクをヘッジするために、アクティブに管理されたデリバティブ・プログラムを導入しています。
また、Genius Groupのように、負債返済のためにビットコイン保有分をすべて売却して清算する企業も現れています。
このような中で、Capital Bが追加資金を募り、ビットコインの買い増しと戦略の加速に動いていることは、極めて強気な姿勢と言えるでしょう。
Capital Bの財務状況と市場の反応
Capital Bは現在、世界で25番目に大きなビットコイン財務企業としてランク付けされています。
同社の現在の保有量は約2,943 BTCであり、時価換算で約2億3,400万ドル(約350億円規模)に達しています。
これは、欧州の上場企業としてはトップクラスの保有量です。
株価の推移と株主の期待
今回の資金調達発表を受けて、パリ証券取引所(Euronext Growth Paris)に上場しているCapital Bの株価は、月曜日の取引で一時6.5%以上急騰しました。
2026年初頭からの市場の不透明感により、年初来では約16%の下落を記録していましたが、アダム・バック氏の強力なコミットメントが確認されたことで、投資家の安心感を誘った形です。
投資家が評価しているのは、調達された資金の用途です。
Capital Bは、この新たな資本をビットコイン財務戦略の「加速」に使用すると明言しています。
これは、単に保有量を増やすだけでなく、AI(人工知能)やデータインテリジェンスを活用した事業展開と、ビットコインの価値を融合させる新たなビジネスモデルの構築を含んでいると考えられます。
ビットコインあたりの株式価値の最大化
Capital Bの公式サイトでは、戦略の核として「完全希薄化後の1株あたりのビットコイン保有量をいかに増やすか」に焦点が当てられています。
これはマイクロストラテジー社が重視している「ビットコイン・イールド(株主あたりのビットコイン増加率)」に近い指標であり、ビットコイン価格が上昇した際のレバレッジ効果を最大化することを意図しています。
まとめ
Capital Bによる130万ドルの資金調達と、アダム・バック氏による強力なバックアップは、2026年におけるビットコイン財務戦略の深化を物語っています。
かつてはビットコインを保有すること自体が投機的と見なされる時期もありましたが、現在ではCapital Bのように「どのようにして効率的にビットコインを蓄積し、株主価値を向上させるか」という、より高度でテクニカルな戦略が求められる時代になっています。
アダム・バック氏が欧州の企業を相次いで支援していることは、ビットコインのエコシステムが地理的にも分散し、強固な基盤を形成している証拠です。
ビットコインの価格変動というリスクを抱えつつも、それを上回るリターンを追求する「ビットコイン・トレジャリー企業」の動きは、今後も金融市場における最大の注目トピックであり続けるでしょう。
Capital Bがこの新たな資金を武器に、どのようなスピード感で保有BTCを積み増していくのか、その動向から目が離せません。
