半導体製造装置で世界トップクラスのシェアを誇る東京エレクトロン(8035.T)の株価が、取引開始直後から買いを集め、3日ぶりに急反発する展開となりました。

4月30日の取引終了後に発表された2026年3月期の本決算と、それにあわせて開示された2027年3月期第2四半期累計(4〜9月)の強気な業績予想が、市場の期待を大きく上回る内容であったことが主因です。

特に、世界的に拡大が続く生成AI向けサーバー需要が、同社の業績を力強く牽引する構図が鮮明となっています。

2027年3月期第2四半期の驚異的な成長予測

東京エレクトロンが公表した2027年3月期第2四半期累計(2026年4月〜9月)の連結業績予想は、半導体市場の力強い回復とAI需要の爆発的な伸びを裏付けるものとなりました。

項目予想数値前年同期比
売上高1兆5700億円33.1%増
営業利益4310億円42.2%増
純利益3280億円35.7%増
中間配当361円前年同期264円から大幅増

この増収増益の背景には、最先端のAIサーバーに不可欠な高性能半導体の需要があります。

同社は、特に利益率の高い最先端プロセス向けの装置に強みを持っており、売上高成長率を上回る営業利益の伸びは、同社の収益構造がより高付加価値な領域へシフトしていることを示唆しています。

セグメント別の成長見通しと先端技術への注力

同社が示した通期ベースの製品別売上見通しは、極めて野心的な内容です。

  1. アドバンストパッケージング:前期比60%増以上
    生成AI向けGPUなどで需要が急増している「HBM(高帯域幅メモリ)」や、複数のチップを統合する「3D実装技術」に関連する装置が、かつてないスピードで成長しています。
  2. 塗布・現像(コータ・デベロッパ):前期比50%増以上
    EUV(極端紫外線)露光技術に必須となる同社のコータ・デベロッパは、世界シェア100%に迫る圧倒的な競争力を維持しており、先端ロジック半導体の増産がそのまま業績に直結します。
  3. エッチング:前期比25%増以上
    3D-NANDの多層化や先端ロジックの構造複雑化に伴い、高精度なエッチング技術の需要も着実に増加しています。

同社は、2026年後半にかけてDRAMや先端ロジックを中心とした出荷がさらに加速すると予測しており、半導体サイクルの本格的な上昇局面入りを強調しています。

前期決算の振り返りと中国市場の影響

一方で、2026年3月期の通期実績を振り返ると、売上高は2兆4435億3300万円(前の期比0.5%増)、営業利益は6249億3600万円(同10.4%減)となりました。

営業利益がマイナスとなった要因の一つに、中国市場における設備投資の一服感が挙げられます。

米中貿易摩擦を背景に、中国国内でのレガシープロセス向け投資が先行して進んでいましたが、その勢いが落ち着きを見せた形です。

しかし、この減益を補ったのが、投資有価証券売却益などの営業外収益であり、最終利益は5744億5400万円(同5.6%増)と着地。

財務体質の強さと資産運用の巧みさが、厳しい環境下でも底堅さを発揮しました。

株価への影響と投資判断の分析

今回の発表を受け、投資家心理は大きく改善しています。

今後の株価動向を左右する要因を整理します。

上昇シナリオ

株価にとって最大のポジティブ材料は、中間配当の大幅増額(361円)です。

前年同期の264円から100円近い増配は、同社のキャッシュフロー創出能力への自信の表れと受け取られ、配当利回りへの意識から下値を支える要因となります。

また、未公表となっている通期予想が9月の中間決算時に開示される際、AI需要の上振れが確認されれば、一段の株価上昇も期待できるでしょう。

下落・よこばいシナリオ

懸念材料としては、PER(株価収益率)などのバリュエーション面での割高感です。

好材料を織り込んで急騰した後は、利益確定売りに押される場面も予想されます。

また、地政学リスクに伴う対中輸出規制のさらなる強化や、米国の景気動向によるハイテク株全体の調整局面には注意が必要です。

短期的な視点では「買い」が先行していますが、中長期的には、AI向け投資が一時的なブームに終わらず、持続的な社会インフラとしての投資へと定着するかどうかが、株価が現在の高水準を維持し、さらに上値を追うための鍵となります。

まとめ

東京エレクトロンが示した強気な業績予想は、半導体業界における「AI特需」が本物であることを改めて証明しました。

2027年3月期第2四半期の営業利益42.2%増という数字は、同社の技術的優位性と、先端半導体市場における不可欠なポジションを物語っています。

中国市場の不透明感というリスクは依然として存在するものの、アドバンストパッケージングやEUV関連装置といった「勝負どころ」で圧倒的な成長を見込む同社の戦略は、投資家にとって非常に魅力的なシナリオです。

大幅増配という株主還元策も追い風となり、同社は再び日本のハイテク株を牽引する主役として、その存在感を強めていくことになるでしょう。

今後の焦点は、9月に発表される通期見通しにおいて、どの程度の「上積み」が提示されるかに移っています。