半導体製造装置で世界トップクラスのシェアを誇る東京エレクトロン(8035)は4月30日、2026年3月期の通期決算発表と同時に、2027年3月期第2四半期(4月〜9月)の業績予想を公表しました。

世界的な生成AI需要の爆発的な拡大を背景に、営業利益は前年同期比42.2%増の4310億円という極めて強気な見通しを打ち出しています。

半導体市場の主役が従来のスマートフォンやPCからAIへと完全にシフトする中、同社の成長シナリオがより鮮明となった形です。

2026年3月期決算の振り返りと市場環境の変容

2026年3月期の通期実績は、売上高が2兆4435億円(前の期比0.5%増)、営業利益が6249億円(同10.4%減)となりました。

営業利益ベースでは減益となったものの、最終利益は投資有価証券の売却益計上などが寄与し、5.6%増の5744億円と過去最高水準を確保しています。

この1年の市場環境を振り返ると、大きな構造変化が見て取れます。

これまで同社の業績を下支えしてきた中国市場における設備投資に一服感が出た一方で、それを補って余りある勢いで成長したのが生成AI用途の半導体需要です。

特に高度な演算能力を必要とするAIサーバー向けに、最先端のロジック半導体や、高帯域幅メモリ(HBM)の需要が急増しました。

これにより、同社が強みを持つコータ・デベロッパやエッチング装置といった前工程装置の引き合いが極めて強い状況が続いています。

2027年3月期第2四半期の強気な予想と増配

同社が発表した2027年3月期上期(4月〜9月)の連結業績予想は、以下の通り非常に高い成長率を見込んでいます。

項目予想値 (2027年3月期上期)前年同期比
売上高1兆5700億円+33.1%
営業利益4310億円+42.2%
純利益3280億円+35.7%

特筆すべきは、利益率の改善です。

増収率を上回る営業増益率を見込んでおり、高付加価値な最先端装置の出荷比率が高まっていることが示唆されています。

また、株主還元についても積極的な姿勢を崩しておらず、中間配当予想を前年同期の264円から361円へと大幅に増額しました。

これは、将来のキャッシュフローに対する経営陣の強い自信の表れと言えるでしょう。

なお、通期の業績予想については現時点で「非開示」とされました。

これは、生成AI市場の成長スピードが速く、下期以降の不透明感や部材調達の状況を精査する必要があるためと見られます。

例年通り、9月の中間決算発表時により確度の高い通期見通しが示される予定です。

生成AIが押し上げる次世代プロセスへの期待

東京エレクトロンの成長を支える最大のエンジンは、GAA (Gate-All-Around)構造のトランジスタや、3次元積層技術といった次世代の半導体製造プロセスです。

生成AI向けのプロセッサは極めて微細な回路形成が求められるため、同社の独壇場である洗浄装置や成膜装置の重要性がさらに高まっています。

特に注目されるのが、AI半導体に不可欠なHBM(High Bandwidth Memory)向け装置です。

HBMはメモリチップを垂直に積み上げるため、高度なボンディング技術や、ウェハを極限まで薄く加工する技術が求められます。

同社はこれらの工程で高いシェアを有しており、AIサーバーの出荷台数が増えるほど、東京エレクトロンの利益が拡大する構造が構築されています。

株式市場への影響と投資判断のポイント

今回の発表を受けて、株式市場ではポジティブな反応が期待される一方で、いくつかの注意点も存在します。

今後の株価動向を分析する上で重要な要素を整理します。

上昇シナリオ

上期の業績予想が市場コンセンサスを上回った場合、素直に買いが先行するでしょう。

特に大幅な増配発表は、配当利回りを重視する投資家層を呼び込む強力なインセンティブとなります。

また、通期予想を非開示としたことで「さらなる上振れ余地」を期待させる展開もあり得ます。

下落・横ばいシナリオ

一方で、期待値がすでに株価に織り込まれている可能性には注意が必要です。

「材料出尽くし」による短期的な利益確定売りに押されるケースも考えられます。

また、中国向けの輸出規制強化などの地政学リスクや、為替の円高推移が利益を押し下げる懸念材料として意識されると、上値が重くなる「よこばい」の展開も想定されます。

今後の焦点は、下期以降も生成AI関連の投資が持続するかどうか、そして非開示となっている通期予想でどれだけ驚きのある数字が出てくるかに集約されます。

まとめ

東京エレクトロンが示した2027年3月期上期の強気な業績予想は、まさに「AIバブル」ではなく「AI実需」が半導体産業を牽引していることを証明するものとなりました。

営業利益42%増、そして大幅な増配という数字は、同社が業界内での圧倒的な競争力を維持している証左です。

中国市場の成熟という逆風を、生成AIという強力な追い風で相殺し、さらなる高みを目指す同社の戦略は、現在のテック市場において最も成功しているモデルの一つと言えます。

投資家にとっては、9月の通期予想開示に向け、WFE (半導体前工程装置)市場の動向を注視しつつ、同社の最先端技術がいかに利益に結びつくかを見極める重要な局面が続きます。