韓国の金融・産業界において、既存の国際金融システムを根底から覆す大きな地殻変動が起きようとしています。

韓国三大金融グループの一角であるハナ金融グループ、総合商社のポスコインターナショナル、そして仮想通貨取引所Upbitの運営元として知られるDunamu(ドゥナム)の3社が、ブロックチェーン技術を活用した次世代海外送金システムの実取引への導入を発表しました。

これは、長年国際送金の標準であったSWIFT(国際銀行間通信協会)の枠組みを超え、実業を伴う貿易取引においてブロックチェーンが「社会インフラ」として機能し始めたことを象徴する歴史的な転換点といえます。

3社による戦略的提携の背景と目的

2026年4月、ソウルのハナ金融グループ本社で締結された三者間業務提携(MoU)は、単なる技術検証の段階を終え、実世界の貿易決済にブロックチェーンを組み込むという極めて野心的なフェーズに突入したことを示しています。

今回のプロジェクトで中心的な役割を果たすのは、Dunamuが開発した独自ブロックチェーンGIWA Chainです。

これまでハナ金融とDunamuは、概念実証(PoC)を通じて、従来の金融網と比較した際の圧倒的な決済スピードとコスト優位性を確認してきました。

今回の提携により、世界中に広範なサプライチェーンを持つポスコインターナショナルの実取引が「テストケース」として提供されることで、システムの実効性が最終検証されることになります。

各社の役割分担と専門性

このプロジェクトは、金融、IT、事業会社の3者がそれぞれの強みを完璧に融合させた構造になっています。

  • ハナ金融グループ:送金処理の管理、資金決済、外国為替(FX)業務の運営。既存の銀行法規に則った安全な資産移動を保証します。
  • ポスコインターナショナル:実際の貿易取引フローにおけるビジネスアプリケーションの適用。実物の貨物移動に伴う決済需要をシステムに供給します。
  • Dunamu(ドゥナム)GIWA Chainを通じたブロックチェーンインフラの提供。取引履歴の不変性と透明性を確保する技術基盤を維持します。

SWIFTからブロックチェーンへ:決済プロセスの革命

なぜ、これほどまでの巨頭たちがブロックチェーン送金に固執するのでしょうか。

その理由は、現在の国際送金システムが抱える「メッセージと資金移動の分離」という構造的な欠陥にあります。

従来システム(SWIFT)の課題

従来のSWIFTを利用した送金では、支払い指示(メッセージ)を送るステップと、実際に資金を動かすステップが別々に処理されます。

この間、複数の「コルレス銀行(中継銀行)」を経由する必要があり、各ステップで手数料が発生するだけでなく、着金までに数日を要することが一般的でした。

また、送金状況の追跡が困難であるという不透明さも、企業にとっては大きなリスクとなっていました。

ブロックチェーン送金による統合

対照的に、今回稼働したブロックチェーンシステムでは、支払い指示と価値の移動が同一のプラットフォーム上でリアルタイムに同期されます。

これにより、中継銀行を介在させる必要がなくなり、送金コストの劇的な削減と、即時決済が可能になります。

比較項目従来のSWIFT送金ブロックチェーン送金(GIWA Chain)
処理時間1〜3営業日リアルタイム(即時)
中継手数料複数の銀行で発生(高コスト)不要または極めて低コスト
透明性追跡が困難な場合がある全参加者がリアルタイムで照会可能
操作性複雑な送金指示が必要デジタル資産と同様の簡便な操作

ポスコインターナショナルが牽引するデジタル金融戦略

ポスコインターナショナルが今回の提携に踏み切った背景には、同社が推進する「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」の徹底があります。

同社は、単なる商社としての枠を超え、デジタル金融を事業競争力の核に据えようとしています。

これまでの実績とデジタルトークンの活用

ポスコインターナショナルは以前からデジタル金融に対して積極的な姿勢を見せてきました。

  1. デジタル債券の発行:HSBC(香港上海銀行)と提携し、約1,400億ウォン(約9,500万ドル)規模のブロックチェーンベース外貨建てデジタル債券を発行。
  2. グローバル決済システム:JPモルガンと提携し、ブロックチェーンを活用したグローバル決済ネットワークを構築。

これらの経験に基づき、今回のハナ金融・Dunamuとの提携は、同社の「デジタル資産エコシステム」を完成させるための最後の一ピースといえます。

実体経済における貨物の流れと、デジタル空間での資金の流れを完全に一致させることで、貿易金融の効率を最大化する狙いがあります。

韓国金融業界に広がるブロックチェーン採用の波

この動きは3社だけに留まりません。

韓国国内では、デジタル資産と伝統金融の融合が急速に進んでいます。

例えば、インターネット専業銀行のKバンクは、Ripple(リップル)のソリューションを活用した海外送金テストを開始しています。

また、韓国銀行(中央銀行)が主導するトークン化預金のパイロットプログラムも進行しており、政府支出のデジタル管理といった分野でもブロックチェーンの活用が検討されています。

このような背景の中で、今回のハナ金融とDunamuの取り組みは、民間主導で「実需に基づいたブロックチェーン決済」を実現したモデルケースとして、国内外から高い注目を集めています。

技術的優位性:GIWA Chainの役割

Dunamuが提供するGIWA Chainは、エンタープライズ向けに最適化されたブロックチェーンであり、高いスループット(処理能力)と強固なセキュリティを両立させています。

Upbitの運営で培われた「大量のトランザクションを安定的に処理するノウハウ」が、この国際送金システムにも活かされています。

まとめ

2026年、韓国のリーダー企業3社が始動させたブロックチェーン送金システムは、単なるコスト削減の道具ではありません。

それは、数十年間にわたって国際経済のボトルネックとなっていた「決済の遅延」と「不透明な手数料」を排除し、真のリアルタイム経済を実現するための基盤です。

ハナ金融グループの金融ノウハウ、ポスコインターナショナルの膨大な実取引データ、そしてDunamuの革新的な技術力。

これらが三位一体となって構築されたシステムは、今後、韓国国内の他の企業や海外の金融機関へも波及していくでしょう。

2026年末までに予定されている「リアルタイム・ブロックチェーン送金の実用モデル」の確立は、国際貿易のあり方を根本から変える歴史的な一歩となることは間違いありません。

わたしたちは今、金融のデジタル化が完成する瞬間を目の当たりにしているのです。