分散型予測市場の最大手であるPolymarket(ポリマーケット)が、米国商品先物取引委員会(CFTC)との間で、米国居住者へのサービス提供を全面的に再開するための協議を行っていることが明らかになりました。
Bloombergが報じた内容によると、Polymarketは2022年の和解以降に課されていた米国ユーザーに対する制限を解除し、主力プラットフォームの再上陸を目指しているとのことです。
2025年12月にはスポーツ契約に特化した限定的な米国展開を開始していましたが、今回の動きは政治や社会情勢を含むメインプラットフォームの完全復帰を意味しており、予測市場業界における勢力図を大きく塗り替える可能性があります。
CFTCとの協議と米国再参入の戦略的背景
Polymarketが現在進めているCFTCとの協議は、かつて同社が直面した法的制約を解消するための重要なステップです。
2022年、Polymarketは未登録のイベント・コントラクト(予測市場)を提供していたとしてCFTCから140万ドルの制裁金を科され、米国ユーザーのアクセスを遮断することを余儀なくされました。
今回の再参入が現実味を帯びている背景には、CFTC内部の構造変化が挙げられます。
現在、CFTCのコミッショナー席には4つの空席があるとされており、意思決定に必要な投票数が通常よりも少なくて済む可能性があります。
この政治的・組織的な空白期間を突く形で、Polymarketは交渉を有利に進めようとしているとの見方が強まっています。
米国市場における限定的な復活と現状
Polymarketは2025年末、規制に準拠したQCEXベースのセットアップを通じて、米国向けにスポーツ予測に特化したアプリをリリースしました。
しかし、これはウェイトリスト制の限定的なものであり、世界の政治情勢や暗号資産価格などを扱う国際版のプラットフォームとは切り離されていました。
今回の協議が成功すれば、米国ユーザーはVPNなどの回避策を使わずに、政治経済を含むあらゆる市場に合法的にアクセスできるようになります。
激化する予測市場の競争環境と競合の動向
Polymarketが米国市場への完全復帰を急ぐ背景には、競合他社であるKalshi(カルシ)の台頭があります。
Kalshiは米国で規制当局の承認を早期に獲得し、予測市場における「合法的な選択肢」としての地位を確立してきました。
| 項目 | Polymarket | Kalshi |
|---|---|---|
| 米国での規制状況 | 一部限定(スポーツのみ)| 全面再開を協議中 | 米国で完全規制承認済み |
| 市場シェア(2024年11月) | 約90%(圧倒的優位) | 10%未満 |
| 近年の動向 | シェア低下傾向 | 海外流動性が強み | 急成長中 | Coinbase等の大手と提携 |
| 主な取引資産 | 暗号資産(USDC等) | 法定通貨(米ドル) |
Polymarketは2024年の米国大統領選挙時、月間出来高の90%以上を占める圧倒的なシェアを誇っていました。
しかし、2025年9月以降、Kalshiへのシェア流出が加速しています。
特にKalshiが米大手取引所のCoinbaseと提携し、公式市場プロバイダーとなったことで、一般ユーザーの流入が顕著になっています。
Polymarketにとって、米国市場への正式な復帰は、失ったシェアを取り戻すための絶対条件と言えるでしょう。
直面する法的リスクと規制上の懸念事項
全面再開に向けた道筋は決して平坦ではありません。
Polymarketを含む予測市場プラットフォームは、連邦レベルだけでなく州レベルでも厳しい監視の目にさらされています。
ウィスコンシン州による訴訟の影響
2026年4月23日、ウィスコンシン州の司法当局は、PolymarketやKalshi、さらにはRobinhoodやCoinbaseといった大手企業を相手取り、訴訟を提起しました。
当局は、これらのプラットフォームが提供する「イベント・コントラクト」が州法における違法なスポーツ賭博に該当すると主張しています。
このような州単位の法的措置は、CFTCとの交渉結果にかかわらず、米国全土での事業展開における大きな障壁となります。
不正利用とインサイダー取引の疑い
また、プラットフォームの健全性についても疑問が投げかけられています。
最近では、米軍兵士が機密情報を利用してPolymarketの国際版で40万ドル以上の利益を得たとして、CFTCと司法省から告発される事件が発生しました。
この兵士はVPNを使用して米国のアクセス制限を回避していたとされており、「実効性のあるアクセス制限が行われていない」という規制当局からの批判を招く形となっています。
さらに、Paradigm(パラダイム)などの調査機関からは、Polymarketの取引ボリュームが「二重計上」されている可能性が指摘されており、データの透明性についても改善が求められています。
まとめ
Polymarketの米国完全復帰に向けた動きは、予測市場が「アングラな賭博」から「公的な金融商品」へと脱皮しようとする大きな転換点です。
CFTCとの協議が妥結すれば、膨大な米国資本が流入し、市場の流動性は爆発的に向上するでしょう。
しかし、州当局による厳しい法的追求や、二重計上問題に代表されるプラットフォームの透明性、そしてインサイダー取引の防止策など、解決すべき課題は山積みです。Polymarketが再び米国でリーダーシップを握れるかどうかは、単に規制の承認を得るだけでなく、ユーザーと規制当局双方からの信頼をいかに再構築できるかにかかっています。
2026年後半に向けて、予測市場を取り巻く法整備と市場競争はさらに激化していくことが予想されます。

