2026年、日本のWeb3市場は法整備の進展とともに、キャピタルゲインを目的とした投資フェーズから、実社会での「ユーティリティ(実用性)」を重視するフェーズへと完全に移行しました。
こうした潮流の中、東証グロース上場企業の株式会社TORICO(7138)は、2026年4月23日、100%子会社の株式会社TORICO Ethereumを通じて、日本円建てステーブルコインの社会実装支援サービスを開始したと発表しました。
本サービスは、東京都が推進するステーブルコイン活用支援の公募開始を背景に、企業のWeb3導入を企画から本番稼働まで一気通貫でサポートするものです。
ステーブルコイン社会実装支援サービスの全容
今回のサービス開始により、TORICOグループはマンガプラットフォーム事業で培った顧客基盤と、高度なブロックチェーン技術を融合させ、企業のB2B・B2C決済のアップデートを狙います。
これまで、日本円建てステーブルコイン(JPYC等)の活用を検討する企業にとって、技術的なハードル以上に「法令対応」や「監査体制の構築」が大きな障壁となっていました。
TORICO Ethereumが提供する支援サービスは、以下の4つのフェーズに分かれています。
| フェーズ | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| フェーズ1 | 要件整理・事業設計 | 顧客課題の特定、発行体・ブロックチェーン基盤の選定。 |
| フェーズ2 | 法令遵守・リスク管理 | 資金決済法・金商法への適合確認、AML(アンチマネーロンダリング)体制構築。 |
| フェーズ3 | システム実装支援 | 発行体・外部基盤との連携設計、開発会社の選定・管理。 |
| フェーズ4 | 運用設計・事業拡大 | 本番稼働後のオペレーション、スケールアップ戦略の策定。 |
特に注目すべきは、「コンプライアンスと実務の両立」です。
上場企業グループとしての知見を活かし、弁護士等の専門家と連携しながら、PoC(実証実験)で終わらせない「収益化を見据えた本番稼働」を強力にバックアップします。
ステーブルコインが解決するビジネスの課題と具体例
ステーブルコインは、従来の銀行振込やクレジットカード決済と比較して、圧倒的な低コストと即時性を実現します。
TORICO Ethereumは、以下の5つの活用シーンを提示しています。
1. 越境ECとインバウンド決済の最適化
海外顧客からの支払いをステーブルコインで受け取り、円に即時換金することで、高額なクレジットカード手数料やチャージバックのリスクを排除します。
これは、グローバル展開を加速させるEC事業者にとって「利益率の直結する改善」となります。
2. 外国籍労働者への給与・報酬支払い
銀行口座の開設が困難なケースもある外国籍労働者に対し、国際送金コストをゼロに抑え、即時着金を実現します。
これにより、企業側は送金事務の手間を大幅に削減できます。
3. B2B企業間決済のスピードアップ
振込手数料の削減だけでなく、支払いサイトの短縮が可能になります。
スマートコントラクトを組み合わせることで、「納品と同時に自動決済」といった、従来の商慣習を劇的に効率化する仕組みが構築可能です。
TORICO Ethereumが持つ圧倒的な優位性
なぜTORICOがこの分野で選ばれるのか。
そこには、同社がこれまでに蓄積してきた独自の知見があります。
10億円規模の資産運用実績
同社は「イーサリアムトレジャリー事業」を通じて、自社で約10億円規模の暗号資産を運用し、ステーキングなどの実務を行っています。
この「自らリスクを取って運用している実務知見」は、単なるコンサルティング会社にはない説得力を持ちます。
業界を牽引するリーダーシップ
代表取締役の尾下順治氏は、上場企業として初となるETH建てNFT販売により約4,000ETH規模の事業を構築した実績を持ちます。
また、COOの高橋氏はJPYCを活用したDeFiプロジェクトの立ち上げに精通しており、実務レベルでの課題解決能力が非常に高いことが特徴です。
投資家視点:TORICO(7138)の株価への影響分析
今回の新サービス開始は、TORICOの企業価値にどのような影響を与えるのでしょうか。
短期・中長期の視点から分析します。
上昇シナリオ
東京都の補助金申請(2026年6月30日締め切り)に向けた案件獲得が順調に進めば、第1四半期以降の業績にコンサルティング収入が寄与し始めます。
さらに、支援先企業のステーブルコイン決済高に応じた手数料モデルなどが構築されれば、「ストック型収益の柱」として市場から高く評価される可能性があります。
株価は2026年後半にかけて、グロース市場内でのWeb3テーマ株の本命として、一段高を目指す展開が期待されます。
下落・よこばいシナリオ
一方で、ステーブルコインに関する規制がさらに強化されたり、企業の導入意欲が想定を下回ったりする場合、先行投資負担が利益を圧迫する懸念があります。
特に、本サービスは「先着5社限定」の枠を設けるなど、丁寧な伴走を重視しているため、短期間で爆発的な利益貢献が見えにくい側面もあります。
その場合、株価は期待感で一時的に買われた後、「よこばい」あるいは材料出尽くしによる調整局面に入る可能性があります。
まとめ
株式会社TORICO(7138)が発表した「ステーブルコイン社会実装支援サービス」は、2026年の日本におけるWeb3実用化を象徴する動きと言えます。
東京都の補助金制度という強力な追い風を受け、先着5社の支援枠は早期に埋まることが予想されます。
「何から始めればよいかわからない」という企業に対し、企画・法令・システム・運用をワンストップで提供するこの取り組みは、日本のDX推進における重要なパズルの一片となるでしょう。
投資家の皆様にとっても、同社がマンガ事業の枠を超え、次世代の金融インフラ支援企業へと変貌を遂げるかどうかに注目が集まる局面です。
まずは、6月末の補助金申請締め切りに向けた案件組成の進捗が、今後の株価を占う試金石となるでしょう。
