メタプラネットのCEOであるサイモン・ゲロヴィッチ氏が、2026年に入り加速度的に進む「円建てステーブルコイン」の普及に対して、強い支持を表明しました。

ゲロヴィッチ氏は自身のSNSを通じて、複数の発行体が異なるアプローチで市場に参入する現状を肯定的に捉え、「競争こそが市場の厚みと信頼性を育てる」という持論を展開しています。

日本国内におけるステーブルコインの法的整備が整い、実用化フェーズに突入した今、この発言は業界全体に大きな波紋を広げています。

サイモン・ゲロヴィッチ氏が示す「円のオンチェーン化」への期待

メタプラネットのサイモン・ゲロヴィッチCEOは、2026年5月、Twitter (現X) 上で円建てステーブルコイン市場の現状について言及しました。

同氏は、JPYCやJPYSC、そして日本の3大メガバンクが進めるパイロットプロジェクトなど、現在国内で進行している複数のプロジェクトをすべて応援すると明言。

その背景には、「円をオンチェーンに広げる」という共通の目的があることを指摘しています。

ゲロヴィッチ氏が率いるメタプラネットは、ビットコインを財務資産として積極的に組み入れる「ビットコイン・トレジャリー戦略」で知られていますが、同氏がステーブルコイン、特に円建てのものに注目している点は非常に興味深いと言えます。

これは、ビットコインという「ボラティリティのある資産」と、円ステーブルコインという「価格が安定した決済手段」が両輪となって、日本のWeb3経済圏を支えるインフラになると考えているためでしょう。

ドル建て市場に学ぶ「複数発行体」の重要性

ゲロヴィッチ氏が円ステーブルコインの多角化を支持する最大の根拠は、先行するドル建てステーブルコイン市場の成功モデルにあります。

USDTとUSDCが共存するエコシステム

現在のグローバルな暗号資産市場では、Tether社が発行する USDT やCircle社が発行する USDC を筆頭に、十数社以上の発行体が並立しています。

かつては「勝者総取り」の市場になると予想されたこともありましたが、実際には各社が異なるユースケース(決済、DeFi、取引所間の送金など)に対応することで、市場全体のパイを拡大させてきました。

項目ドル建てステーブルコイン (先行事例)円建てステーブルコイン (2026年現在の日本)
主要発行体Tether, Circle, Paxos, PayPalなどJPYC, JPYSC, 3メガ銀系, プログマなど
市場構造複数の発行体による競争と共存改正資金決済法に基づく多様な参入
主な用途国際送金、DeFi、リスクヘッジ国内決済、企業間精算、日本発DeFi
信頼性担保各国規制への準拠、準備資産の開示信託、銀行免許、資金移動業による保全

ゲロヴィッチ氏は「円も同じでいい」と述べており、特定の一社が独占するのではなく、多様なプレイヤーがそれぞれの強みを活かして参入することが、結果として日本の金融市場のデジタル化を加速させると確信しています。

2026年に台頭する主要な円ステーブルコインの動向

2025年6月の改正資金決済法の施行から1年が経過し、2026年の現在、日本国内では複数の強力なプレイヤーが円ステーブルコインを展開しています。

ゲロヴィッチ氏が挙げた各プロジェクトは、それぞれ独自の立ち位置を確立しています。

JPYC:先駆者としてのエコシステム拡大

国内ステーブルコインの先駆けであるJPYCは、前払式支払手段としての強みを活かしつつ、信託型ステーブルコインへの展開も進めています。

すでに多くのオンチェーンサービスで利用されており、「一般ユーザーが最も使いやすい円ステーブルコイン」としての地位を固めています。

JPYSC:特定用途・地域に特化したアプローチ

JPYSCなどの新興勢力は、特定のスマートコントラクトとの親和性や、地域経済圏での利用に特化した設計を採用しています。

汎用的な決済だけでなく、特定のdApps内でのユーティリティを重視することで、独自のコミュニティを形成しています。

3メガバンクによるパイロットプロジェクト

三菱UFJ信託銀行の「Progmat Coin (プログマコイン)」を基盤としたプロジェクトや、みずほ、三井住友を含むメガバンク連合による実証実験は、機関投資家や大手企業が安心して利用できる「信頼のインフラ」を提供しています。

銀行発行型ステーブルコインは、多額の企業間決済(B2B)において、既存の銀行送金に代わるリアルタイム決済手段としての期待を背負っています。

ステーブルコイン普及が日本経済にもたらすパラダイムシフト

円ステーブルコインがオンチェーンで普及することは、単なる「支払い手段のデジタル化」に留まりません。

それは、日本におけるWeb3の社会実装を一段階上のフェーズへと引き上げる力を持っています。

1. 国際送金と決済コストの劇的な削減

従来のSWIFT(国際銀行間通信協会)経由の送金では、高い手数料と数日間の着金待ちが発生していましたが、ステーブルコインを利用すれば、数秒から数分での着金と、極めて安価な手数料が実現します。

これは、海外との取引が多い日本企業にとって、キャッシュフローの効率化という大きなメリットをもたらします。

2. 日本発DeFiエコシステムの活性化

これまでDeFi(分散型金融)の世界ではドル建てが主流でしたが、円ステーブルコインの普及により、日本人が為替リスクを負うことなくオンチェーンで資産運用できる環境が整います。

これにより、日本国内の預貯金がオンチェーンへと流入し、新たな金融サービスが生まれる土壌となります。

3. プログラマブル・マネーによるビジネスの自動化

スマートコントラクトと円ステーブルコインを組み合わせることで、「条件が満たされたら自動的に円を支払う」というプログラムが可能になります。

物流と決済の同期や、マイクロペイメント(超少額決済)の自動化など、これまでの銀行システムでは不可能だったビジネスモデルが実現します。

今後の展望:競争が育む「市場の厚み」

ゲロヴィッチ氏が指摘するように、多くの発行体が競い合うことは、消費者や企業にとって「選択肢が増える」ことを意味します。

手数料の安さで選ぶのか、信頼性で選ぶのか、あるいは利用できるプラットフォームの多さで選ぶのか。

ユーザーのニーズに応じて最適な円ステーブルコインが選ばれるようになることで、市場全体の流動性は劇的に向上します。

また、異なるブロックチェーン間での相互運用性(インターオペラビリティ)の確保も、2026年後半に向けた重要なテーマとなるでしょう。

Ethereum、Polygon、Solana、Avalancheといった主要なチェーン上で円ステーブルコインがシームレスに移動できるようになれば、日本円のプレゼンスはデジタル空間において再び高まる可能性があります。

まとめ

メタプラネットCEOのサイモン・ゲロヴィッチ氏による円ステーブルコイン各社への支持表明は、日本の仮想通貨市場が「投機」から「実用」へと完全にシフトしたことを象徴する出来事と言えます。

ドル建て市場が歩んできた「多様な発行体による共存共栄」の歴史が、今まさに日本でも再現されようとしています。

JPYC、JPYSC、そしてメガバンク系プロジェクト

それぞれが異なるアプローチで円をオンチェーンへと導くことで、日本のWeb3エコシステムはより強固なものへと進化していくでしょう。

改正資金決済法という法的基盤の上に、民間企業の競争というエンジンが加わった今、「円のデジタル化」はもはや避けることのできない必然の潮流となっています。

私たちは今、日本の金融インフラが歴史的な転換点を迎える瞬間に立ち会っているのです。