貴金属リサイクルの大手であるAREホールディングス (5857)が、2026年5月1日、次期に向けた強気な成長シナリオを提示しました。

2027年3月期の通期連結業績予想において、最終利益が前期比19.0%増の290億円に達する見込みであることを発表。

生成AIの普及に伴うデータセンター需要の爆発的な拡大を背景に、電子分野での貴金属回収が加速する見通しです。

株主還元策として増配も打ち出しており、市場の注目を集めています。

2026年3月期の振り返り:増収増益を支えた外部環境と事業の進展

AREホールディングスの2026年3月期決算は、売上高が前の期比12.6%増の5699億9200万円、最終利益が同70.7%増の244億4100万円という大幅な増益を記録しました。

この好業績の背景には、主に3つの要因が挙げられます。

第一に、世界的な貴金属価格の高騰です。

地政学リスクの高まりやインフレヘッジとしての金需要が増大したことで、リサイクル事業における仕入れと販売の価格差が拡大し、収益性が大幅に向上しました。

第二に、電子分野での金回収量の増加です。

スマートフォンやサーバー等の廃棄デバイスから回収される金の量が増え、高付加価値なリサイクルビジネスが堅調に推移しました。

第三に、北米精錬事業の成長です。

連結子会社のアサヒ・リファイニングを中心に、精錬量の拡大と製品加工プロセスの効率化が進んだことで、海外市場における存在感が高まりました。

これらの要因が相乗効果を生み、当初の予想を上回る着地となりました。

2027年3月期の業績予想:AIデータセンター需要が牽引する成長シナリオ

2027年3月期の業績予想では、売上高6800億円(前期比19.3%増)、最終利益290億円(同19.0%増)と、さらなる成長を計画しています。

この強気な計画を支える柱となるのが、「電子分野」と「触媒分野」の2軸です。

電子分野:生成AI革命による「都市鉱山」の価値向上

現在、世界中で加速している生成AIの普及は、同社の電子分野にとって強力な追い風となっています。

AIの学習・推論には膨大な計算能力が必要であり、それを支えるデータセンターには高スペックなGPUやサーバーが大量に投入されています。

これらの電子機器には、導電性や耐食性に優れた金やパラジウムなどの貴金属が多く使用されています。

同社は、これらデータセンターの更新サイクルに伴って排出されるスクラップを「都市鉱山」として効率的に回収する体制を整えています。

今後、旧世代の設備がリプレースされる時期に入ると予想されるため、回収量の飛躍的な増加が見込まれています。

触媒分野:坂東工場の本格稼働による競争力強化

触媒分野においては、茨城県にある坂東工場の本格稼働が大きな鍵を握っています。

最新鋭の設備を備えた同工場の稼働により、自動車排ガス浄化触媒や工業用触媒からの貴金属回収効率が飛躍的に向上します。

事業分野主な成長ドライバー期待される効果
電子分野AIデータセンター需要の拡大金・パラジウム等の回収量増、利益率向上
触媒分野坂東工場の本格稼働採算性の向上、処理能力の拡大、コスト削減
北米精錬精錬量の拡大と製品加工グローバルシェアの維持、安定収益の確保

株主還元策の強化:10円の増配を予定

好調な業績を背景に、同社は株主還元についても積極的な姿勢を見せています。

2027年3月期の年間配当予想は、中間配当65円、期末配当70円の合計135円と設定されました。

前期の実績が125円であったことから、10円の増配となります。

同社は中長期的な成長投資と安定的な配当の両立を掲げており、配当性向の維持と利益成長に応じた還元を明示しています。

最終利益の成長率(19.0%)に対し、配当もしっかりと引き上げることで、投資家からの信頼獲得を狙う格好です。

投資判断の視点:株価への影響とリスク要因の分析

今回の発表を受け、株式市場ではポジティブな反応が期待されます。

ここでは、今後の株価に与える影響を多角的に分析します。

上昇シナリオ

株価が上昇する要因として最も期待されるのは、EPS(1株当たり利益)の向上に伴うPERの割安感です。

最終利益が2割近く成長する計画に対し、現在の株価水準が据え置かれれば、投資魅力は相対的に高まります。

また、AI関連銘柄としての側面が強調されることで、これまで貴金属リサイクル銘柄として見ていた層以外の投資家からの買いが入る可能性もあります。

下落・よこばいシナリオ

一方で、注意すべきは貴金属価格の変動リスクです。

今期の計画は一定の相場価格を前提としていますが、急激な円高進行や貴金属相場の下落が起きた場合、利益が圧迫される可能性があります。

また、市場が既に強気な見通しを一定程度織り込んでいた場合、発表直後の「材料出尽くし感」による一時的なよこばい推移や調整も否定できません。

中長期的な視点

中長期的には、世界的なサーキュラーエコノミー(循環型経済)の流れが同社の追い風になります。

脱炭素社会の実現に向けて、資源の再利用は国策レベルの課題となっており、AREホールディングスのような高度な回収技術を持つ企業の価値は、単なる業績数値以上に高まっていくと考えられます。

まとめ

AREホールディングスが発表した2027年3月期の業績予想は、AIデータセンターという明確な成長エンジンと、坂東工場の稼働による内部効率の向上を組み合わせた、非常に説得力のある内容でした。

最終利益290億円、年間配当135円という数字は、同社が「資源循環のグローバルリーダー」としての地位をより盤石にする意思表示でもあります。

貴金属相場の変動という外部要因には注視が必要ですが、AI革命という構造的な変化を追い風にできる同社のポジションは、投資家にとって非常に魅力的な選択肢の一つとなるでしょう。

今後、四半期ごとの進捗において、特に電子分野の回収量が計画通りに推移するかが、株価のさらなる上値を追うための重要なチェックポイントとなります。