トランプ前大統領一族が主導する分散型金融(DeFi)プロジェクト「World Liberty Financial(WLF)」が、かつてない激震に見舞われています。
2026年4月30日、同プロジェクトのネイティブトークンであるWLFI価格は、コミュニティで開始されたガバナンス提案をきっかけに、わずか24時間で約14%もの急落を記録しました。
この提案は、初期投資家やインサイダーが保有する膨大なトークンに新たなロックアップ(売却制限)期間を設けるというものですが、市場はこれを「事実上の流動性凍結」と受け止め、ネガティブな反応を示しています。
トランプ一族の政治的背景と密接に結びついたプロジェクトであるだけに、今回の動揺は単なる価格変動を超え、仮想通貨業界全体を巻き込んだ大きな議論へと発展しています。
620億枚のトークンを封じ込める「大規模ベスティング案」の全貌
今回の価格急落の直接的な引き金となったのは、4月15日に提出され、4月29日に正式に投票が開始されたガバナンス提案です。
この提案は、プロジェクトの初期段階に関与した投資家やインサイダー(創設者、チームメンバー、アドバイザー)が保有する、合計622億8225万2205枚のWLFIトークンを対象としています。
提案の核心は、これらのトークンに対して非常に厳格な「ベスティング(権利確定)スケジュール」を適用することにあります。
具体的には、以下の表のようなスケジュールが提示されています。
| 対象者 | クリフ期間(完全ロック) | ベスティング(段階的解除) | 合計期間 |
|---|---|---|---|
| 初期投資家 | 2年間 | 2年間のリニア解除 | 4年間 |
| インサイダー(運営・チーム) | 2年間 | 3年間のリニア解除 | 5年間 |
World Liberty Financial側は、この構造を「市場への急激な供給を抑え、プロジェクトの未来に真にコミットする保有者の手にトークンを留めるため」と説明しています。
しかし、少なくとも2年間は一切市場に流通しないという極端な制限に対し、既存の保有者からは強い反発が起きています。
トランプ氏の任期と重なる「2年」の壁
今回の提案で特に批判の的となっているのが、ロックアップ期間の「2年」という数字です。
一部の有力な投資家やアナリストは、この期間がドナルド・トランプ氏の米大統領としての任期期間と重なっている点を指摘しています。
Moonrock Capitalの創設者であるサイモン・デディック氏は、この提案を「ラグプル(出口詐欺)」になぞらえ、トランプ氏の政治的影響力が最大化されている期間中に投資家の資金を固定し、退任後の出口戦略を確保しているのではないかという疑念をX(旧Twitter)上で投げかけました。
著名投資家も「最も不条理」と一蹴する異例のガバナンス
この提案に対し、仮想通貨業界の巨頭たちからも厳しい視線が注がれています。
特に注目すべきは、TRONの創設者であるジャスティン・サン氏の動向です。
サン氏はWLFIトークンの主要な大口保有者(ホエール)の一人ですが、今回の提案を「これまでに見た中で最も不条理な提案の一つ」と公に批判しました。
また、今回のガバナンス投票プロセス自体にも「非民主的」であるとの批判が集中しています。
投票しない者へのペナルティ
今回の提案には、投票に参加しなかった保有者に対して、その保有トークンを「無期限にロックする」という、一般的なDAO(自律分散型組織)では考えられないほど強硬なルールが含まれています。
運営側は「ガバナンスへの積極的な参加を促すため」としていますが、コミュニティ内では「選択の自由を奪う強要である」との怒りの声が広がっており、これがさらなる売りを誘う要因となりました。
止まらないWLFIの価値下落:ATHから70%超のマイナス
市場の不信感は、残酷なまでに価格に反映されています。
WLFIの市場価格は、執筆時点で0.06367ドル付近で推移しており、前日比で13.6%の下落となっています。
しかし、より深刻なのは中長期的なパフォーマンスです。
WLFIは市場に上場して以来、最高値(ATH)から既に72.8%も値を下げています。
トランプ・ブランドを武器に鳴り物入りで登場したプロジェクトでしたが、度重なるプラットフォームの技術的問題や、不透明なガバナンス体制が露呈するたびに、投資家が離れていく負の連鎖が続いています。
今回の提案は、投票権の99.95%が「賛成」に回っており、可決されることはほぼ確実視されています。
しかし、これは主要な議決権が運営に近い大口に集中していることを示唆しており、中央集権的な支配構造が改めて浮き彫りになりました。
一般投資家がSNS上で「これはコミュニティの声ではない」と反発を強めるのも無理はありません。
まとめ
World Liberty Financialが掲げた「620億枚のトークンロック案」は、表向きはプロジェクトの安定を目的としていますが、実態は投資家からの信頼を著しく損なう劇薬となりました。
2年間のクリフ期間という設定が政治的タイムラインと符号している点や、不参加者へのペナルティといった異例の措置は、DeFiの本質である透明性や自由とはかけ離れた印象を与えています。
WLFIの価格がATHから7割以上下落している現状で、このような強引なガバナンスが強行されれば、プロジェクトの寿命を縮める結果になりかねません。
投票期限である5月7日までに、運営側が批判を真摯に受け止めて修正案を出すのか、あるいは強行突破して市場のさらなる冷え込みを招くのか。
トランプ家という巨大なブランドを背負ったこのプロジェクトの真価が、今まさに問われています。

