日本経済がデフレ脱却からインフレ局面へと完全にシフトし、金利のある世界での企業価値が問われる2026年。

26年3月期(2025年度)の決算発表シーズンがいよいよ本格化しています。

投資家にとって、この時期の最大の関心事は「本決算でどれだけの実績を積み上げたか」だけでなく、発表直前に行われる「業績予想の上方修正」の有無にあります。

特に今期は、円安の定着や価格転嫁の浸透、そしてインバウンド需要の継続的な拡大といった追い風を背景に、期初予想を大幅に上回る利益を叩き出す企業が続出しています。

本記事では、過去の修正データと第3四半期までの進捗率を徹底的に分析し、4月末から5月中旬にかけて「上方修正」が濃厚視される31銘柄を厳選しました。

銘柄ごとの株価インパクト予測を含め、本決算直前の投資戦略を深掘りします。

上方修正期待銘柄に注目すべき理由と「修正アノマリー」

株式市場には、決算発表の数日前から数週間前に業績修正を発表する「クセ」を持つ企業が数多く存在します。

これは「修正アノマリー」とも呼ばれ、企業の管理体制やディスクロージャー姿勢が一定であることから、過去に上方修正を行った企業は今年も同じタイミングで修正を行う可能性が極めて高いという経験則に基づいています。

なぜこのタイミングでの上方修正が重要なのか。

それは、本決算の発表と同時に開示される「次期(27年3月期)の業績予想」に対するハードルを調整する意味合いがあるからです。

今期の着地を事前に上方修正しておくことで、次期の予想が多少保守的であっても、市場の失望を最小限に抑える効果があります。

また、上方修正に伴う「増配」や「自社株買い」の発表は、株価を一段高へ押し上げる強力なカタリストとなります。

「上方修正の常連」に見る盤石の経営基盤

今回選出した31銘柄の中でも、特筆すべきは「数年連続で同時期に上方修正を発表している」企業群です。

これらの企業は、期初に極めて保守的な(低めの)予想を立て、期中に着実に利益を積み上げる、いわゆる「手堅い経営」を実践しています。

8年連続修正の金字塔、スズケン(9987)の信頼感

スズケン <9987>は、医薬品卸大手として強固な物流網を誇りますが、注目すべきはその「8年連続上方修正」という驚異的な実績です。

26年3月期においても、第3四半期時点での経常利益進捗率は83.5%に達しており、過去5年の平均進捗率73.1%を大きく上回っています。

株価への影響分析:【上昇】

スズケンのような低PBR(株価純資産倍率)銘柄が上方修正を発表した場合、市場は「資本効率の改善」を期待します。

修正発表とともに、株主還元方針の強化が示されれば、株価はレンジを上抜けする可能性が高いでしょう。

建設セクターの雄、奥村組(1833)の粘り強さ

奥村組 <1833>は6年連続で上方修正を行っています。

建設業界全体が資材高や労務費の上昇に苦しむ中、同社は選別受注と徹底したコスト管理により、26年3月期の第3四半期ですでに通期計画に対する進捗率が125%に到達しています。

これは、本決算での大幅な上振れ着地がほぼ確実であることを示唆しています。

株価への影響分析:【よこばい~上昇】

進捗率100%超えはすでに周知の事実となっている面もありますが、「次期の受注見通し」が明るければ、さらなる買いを呼び込みます。

実績の修正だけでなく、次期の配当維持・増配への期待が下値を支えるでしょう。

進捗率100%超え!「事実上の上振れ確定」銘柄の戦略

4-12月期(第3四半期)の段階で、すでに通期の利益計画を上回っている銘柄は、会計上の調整がない限り、上方修正が「不可避」な状態にあります。

ウッドワン(7898)の驚異的な進捗

建材大手のウッドワン <7898>は、第3四半期時点の経常利益が1,670百万円となっており、通期計画の1,200百万円を139%も上回っています。

住宅着工件数の伸び悩みという逆風がありながらも、高付加価値製品へのシフトと価格改定が奏功した形です。

株価への影響分析:【上昇】

これほどの超過達成は、市場予想(コンセンサス)を大きく上回るサプライズとなります。

PER(株価収益率)も依然として1桁台と割安圏にあり、修正発表を機にバリュエーションの訂正(リレーティング)が起こる可能性が濃厚です。

グローブライド(7990)とレジャー需要の底堅さ

「ダイワ」ブランドで知られる釣具大手のグローブライド <7990>も進捗率121%と好調です。

コロナ禍後のアウトドアブームが一服した後も、富裕層向けの高級タックルや海外展開が収益を牽引しています。

株価への影響分析:【下落リスクに注意】

レジャー関連株は、業績がピークを打ったと判断されると「材料出尽くし」で売られる傾向があります。

上方修正の内容以上に、「次期の需要見通し」に陰りが見えないかが運命の分かれ道となるでしょう。

26年3月期「上方修正」期待の注目31銘柄リスト

以下の表は、時価総額30億円以上の3月期決算企業の中から、過去の修正実績と今期の進捗率に基づき選出した31銘柄です。

コード銘柄名進捗率(%)5年平均(%)予想PER昨年修正日
7898ウッドワン13975.69.25/7
1833奥村組12572.916.25/9
6647森尾電12450.816.75/9
7084スマイルHD12282.037.65/8
7990グロブライド12199.710.64/30
5915駒井ハルテク11348.765.85/9
297AアルピコHD1121008.85/9
6292カワタ11165.991.94/30
5956トーソー10760.913.05/12
6557AIAI10534.015.04/30
7150島根銀行10489.717.15/9
9405朝日放送HD99.851.78.65/9
7780メニコン99.685.821.04/30
9060日ロジテム99.071.28.14/30
4337ぴあ95.771.920.15/8
7887南プラ95.182.05.15/9
4553東和薬品94.881.211.45/7
4816東映アニメ93.975.928.15/14
1860戸田建92.756.514.84/30
8871ゴールドクレ92.177.322.34/30
1827ナカノフドー89.867.613.65/9
9619イチネンHD89.779.98.25/1
8920東祥85.274.110.05/2
9310トランシティ84.880.111.95/1
9987スズケン83.573.111.54/30
4771F&M83.372.414.95/13
6351鶴見製83.066.213.95/12
3934ベネフィJ81.373.612.05/1
6485前沢給装81.180.912.25/7
6393油研工80.969.512.55/13
4208UBE80.960.28.45/7

投資判断を左右する「上方修正の質」を見極める

単に数値が上振れるだけでなく、その「中身」を吟味することが重要です。

投資家が最も好むのは、売上高の拡大を伴う「本業の儲け(営業利益)」の上方修正です。

注目すべきポイント1:営業利益率の改善

例えば、東映アニメーション <4816>のように、海外での版権ビジネス(IP)が好調な場合、追加コストを抑えながら利益が伸びるため、利益率が劇的に向上します。

このような修正は、次期以降の収益力強化を期待させ、株価の持続的な上昇に寄与します。

注目すべきポイント2:一過性利益の除外

一方で、資産売却や為替差益による「経常利益」のみの上方修正には注意が必要です。

これらは「一過性の要因」と見なされ、発表直後に売られる「材料出尽くし」の典型パターンに陥ることがあります。

特に為替に依存する輸出関連株は、足元の円高局面への転換リスクを考慮する必要があります。

注目すべきポイント3:株主還元への波及

利益の上方修正は、多くの場合「増配」の原資となります。

特にプライム市場に上場する企業は、東証からのPBR改善要請を受け、配当性向の引き上げや機動的な自社株買いを発表するケースが増えています。

DOE(自己資本配当率)を指標として採用している企業は、業績上振れがダイレクトに配当増に直結するため、要チェックです。

セクター別の動向とリスク要因

26年3月期の業績を俯瞰すると、セクターごとに明暗が分かれています。

建設・インフラ:【回復】

戸田建設 <1860>ナカノフドー建設 <1827>などのゼネコン各社は、不採算案件の一巡と工事採算の改善が進んでいます。

上方修正の蓋然性は高いものの、2024年問題に伴う労務費のさらなる上昇が、次期予想の重石になる懸念があります。

サービス・レジャー:【二極化】

ぴあ <4337>東祥 <8920>などは、人流回復の恩恵をフルに受けています。

しかし、人件費高騰を価格転嫁できている企業と、コスト増に苦しむ企業の二極化が進んでおり、進捗率が高い銘柄への選別投資が不可欠です。

まとめ

2026年3月期の決算発表は、日本企業がインフレ環境下でいかに自らの稼ぐ力を証明できるかの試金石となります。

今回紹介した31銘柄は、いずれも厳しい経営環境の中で着実に成果を上げ、「上方修正」という形での市場への回答が期待される企業ばかりです。

ただし、投資にあたっては、上方修正が発表される「タイミング」と「市場の期待値」との乖離に十分注意してください。

すでに株価が修正を織り込んで高値圏にある場合は、発表が「売り場」になることもあります。

逆に、進捗率が極めて高いにもかかわらず、株価が放置されている銘柄こそが、真の「お宝銘柄」となるはずです。

本決算発表に向けたカウントダウンが始まる中、これらの銘柄の動向を注視し、次なる成長フェーズへの予兆を逃さないようにしましょう。